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日本紀神代抄

日本題号事〈◯中略〉 やまと(○○○)ヽ雲に就て三義あり、一には山跡也、上古の世、国の初め、海水の潤ありて、土いまだ堅まらぬ故に、人皆山に往来して、其跡多が故に山跡と雲、一には山止也、人の居住するお止と雲、故に山に止る心にて山止(やまと)とも雲、巣居穴居の心ぞ、一には山戸(やまと)也、昔万民の住所する形お戸と雲、故に山戸とも雲、以上三義は和歌の抄物等に見たり、実には天地の開る音、やあとひヾく也、此国は三界の源なれば、自開避の声お以て、やまとヽ雲、やは声の初、まととは的の字也、天地開避の端的と雲心也、やまとと雲に字声あり、古今序にやまとうたと雲は、此書のやまとふみと雲に、字声同じからず、仮令大和国此声、やまとうたの声は山跡の義也、定家卿説、やまとふみと雲声は、山戸(やまと)、山止の義也、〈六条家の説〉三説お以て見れば、どちへも読べき歟、日本とも倭とも書て、共にやまとと読也、和の字おかくは音通ずる故也、大日本とも大倭とも書ども、必おほやまとと読まず、隻やまとと読也、日本おやまとと読は義訓也、〈◯下略〉