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南海通紀

日本地勢記 通考 愚謂く、天に北斗七星あり、是兵の形とす、四星方に布て其中間広し、三星曲に布て其間狭く長し、是お四三の星と雲ふ、其先鋒お破軍星と雲ふ、其中間に輔星あり、故に名は七星といへども、数は八つあり、蓋し吾邦の地勢も亦是に妨仏たり、東北は山に拠り、其地方にして広し、西南は海に浜し、其地曲にして狭く長し、西州に力の不足ところお救ふ時は、其形の七星に似たり、吾邦は武勇万国に勝れたる所以の者は是に因るか、夫日本国は土地扁少也といへども、中華の広大なるに不恐、東海の中に独立し、兵威お以て外域お圧し、諸蕃の来り侵す事お得ずして、国家安寧なるものは、誠に雄偉と雲つべき也、上古より以来天子お立、我王命お尊み、我神明お崇め、我庶民お傾壊せざる所以のものは、地勢の宜お得たるに依て也、我神明威霊にして加護あり、我民人正直にして武勇ある事も、壌地の美しからしむる所なり、