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甲子夜話
四十八
林氏曰、居宅の地名世上にて、やよすがしと雲、是もと諳厄利亜人やんようすと雲し者の僑寓せしより地の字となり、やよすがしと雲、従来は蛮語なり、夫お類音にて取なし、昔は八重洲河岸と書く、家の鳳岡文集に此如く見へしかば、御普請役所の古帳検点のことお、先年奉行に頼しに、元禄頃の古記、皆八重洲の字お用て書くと、因て官へ呈する文書並に世間文通の書牘、その外にも予家にては、旧のまヽお用ゆ、他にては今は兎角八代洲と書くなり、