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大和事始
一天地
都 或人の雲、近世諸の称呼訛謬多し、〈◯中略〉又猶笑べきものは、諸国号お書するに、必陽(○)の字お以てこれにそふ、武州お武陽とし、摂州お摂陽とし、播州お播陽とし、備州お備陽とし、筑紫お紫陽とし、伏見お伏陽とし、長崎お崎陽とす、其余皆然り、殊にしらず、陽はもと陰に対するの称にして、則山南水の北の謂也、華陽、岳陽、洛陽、汾陽、感陽の類の如き是也、もし山水の指標すべきものなき時は、則大都通津といへども、又陽お以て、呼べからず、山の北、水の南お陰といふも亦同じ、