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東雅
三地与
里さと 郷の字、読むこと亦同じ、郷といひ、里といひ、其字同じからねど、共に読てさとといへば、相通じ用ゆる事ありと見えたり、たとへば和銅の詔に、諸国郡郷名著好字とありしに、延喜式には、諸国の郡郷里名、並用二字必取嘉名と見えしが如き是也、郷里の字共に読て、さとといふは、さは狭(さ)也、とは所(と)也、其狭き所なるの謂なり、又大化の詔、及び其後代々の令式に見えし、造戸籍之法によれば、凡五十戸為里と見えたり、郷には寛狭の同じからぬありと見えて、凡居狭郷、有楽遷就寛お処置すべきの法なり、又度地之法、五尺為歩、三百歩為里とも見えたり、さらば汎く言ひてさとといふには、郷里の字通じ用ひぬれど、凡造戸籍度地等の法に至りては、里の字お用ひて、読むで其字の音お用ゆると見えたり、