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年々随筆

京都お洛陽長安といふ事お、物しり人のよくそしる事なり、さるはから国に此二つの京名高きゆえ、こヽの京おもそのまねして、何となくいふ事とおもふ故なり、そは中々物しらぬまどひ也、こヽの京の洛陽長安といふ事は、桓武の御時都定め給ひて、左京お洛陽城、右京お長安城と名づけられたる御制のまヽにいふ也、さらにわたくしの称呼にあらず、これもとから国おうちつけにまねびたる名にて、あさまなるこヽちはすれど、何事も吉例お逐るヽが朝廷の恒典なるに、この二つは、から国にてめでたき京の名なれば、それおうつされたるにて、これ故実なり、さらにあさまなる事にはあらず、〈◯下略〉