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古事記伝
二十一
凡て書紀に、遷都とあるは、たヾ漢籍にならひて、記されたるものにして、実は後世の如く、引遷されたるには非ず、上代に御代ごとに、都のかはれるは、大方上代には、皇子たちも御父天皇と、同大宮には住坐ずて、多くは別地に住坐りしかば、御父天皇崩坐て、皇太子天津日嗣所知めせば、其元より住坐る郷、即都となれりしなり、されば諸臣連たちなども、多くは各其本郷に住めりしかば、都城(みやこ)と雲ても、後世の如く、こよなく大きになどはあらざりしかば、何地(いづく)にまれ、元来住坐る宮ならがらに、天下知しヽなり、