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太平記
十八
先帝潜幸芳野事 刑部大輔景繁武家の許お得て、隻一人伺候したりけるが、勾当内侍お以て潜に奏聞申けるは、〈◯中略〉急ぎ近日の間に、夜に紛れて大和の方へ臨幸成候て、吉野十津川の辺に皇居お被定、諸国へ綸旨お被成下、義貞が忠心おも助られ、皇統の聖化お被耀候へかしと、委細にぞ申入たりける、〈◯中略〉雲霞の勢お腰輿の前後に囲ませて、無程吉野(○○)へ臨幸なる、〈◯下略〉