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万葉集
六雑歌
傷惜寧楽京荒墟(○○○○○)作歌三首 紅爾(くれないに)、深染西(ふかくそみにし)、情可母(こヽろかも)、寧楽乃京師爾(ならのみやこに)、年之歴去倍吉(としのへぬべき)、 世間乎(よのなかお)、常無物跡(つねなきものと)、今曾知(いまぞしる)、平城京師之(ならのみやこの)、移徒見者(うつろふみれば)、 石綱乃(いはつなの)、又変若反(またわかがへり)、青丹吉(あおによし)、奈良乃都乎(ならのみやこお)、又将見鴨(またもみんかも)、 悲寧楽故京郷作歌一首并短歌 八隅知之(やすみしし)、吾大王乃(わがおほきみの)、高敷為(たかしらす)、日本国者(やまとのくには)、皇祖乃(すめろぎの)、神之御代自(かみのみよより)、敷座流(しきませる)、国爾之有者(くににしあれば)、阿礼将座(あれまさむ)、御子之嗣継(みこのつぎつぎ)、天下(あめのした)、所知座跡(しらしまさむと)、八百万(やほよろづ)、千年矣兼而(ちとせおか子て)、定家牟(さだめけむ)、平城京師者(ならのみやこは)、炎乃(かぎろひの)、春爾之成者(はるにしなれば)、春日山(かすがやま)、御笠之野辺爾(みかさののべに)、桜花(さくらばな)、木晩牢(このくれがくり)、貌鳥者(かほよどりは)、間無数鳴(まなくしばなき)、露霜乃(つゆじもの)、秋去来者(あきさりくれば)、射駒山(いこまやま)、飛火賀塊丹(とぶひがおかに)、芽乃枝乎(はぎのえお)、石辛見散之(しがらみちらし)、狭男牡鹿者(さおしかは)、妻呼令動(つまよびどよめ)、山見者(やまみれば)、山裳見貌石(やまもみがほし)、里見者(さとみれば)、里裳住吉(さともすみよし)、物負之(ものヽふの)、八十伴緒乃(やそとものおの)、打経而(うちはへて)、里並敷者(さとなみしけば)、天地乃(あめつちの)、依会限(よりあいのきはみ)、万世丹(よろづよに)、栄将往跡(さかえゆかむと)、思煎石(おもひにし)、大宮尚矣(おほみやすらお)、恃有之(たのめりし)、名良乃京矣(ならのみやこお)、新世乃(あたらよの)、事爾之有者(ことにしあれば)、皇之(おほきみの)、引乃真爾真荷(ひきのまにまに)、春花乃(はるはなの)、遷日易(うつろひかはり)、村鳥乃(むらとりの)、旦立往者(あさたちゆけば)、刺竹之(さすたけの)、大宮人能(おほみやびとの)、蹈平之(ふみならし)、通之道者(かよひしみちは)、馬裳不行(うまもゆかず)、人裳往莫者(ひともゆか子ば)、荒爾異類香聞(あれにけるかも)、 反歌二首 立易(たちかはり)、古京跡(ふるきみやこと)、成者(なりぬれば)、道之志婆草(みちのしばくさ)、長生爾異梨(ながくおひにけり)、 名付西(なつきにし)、奈良乃京之(ならのみやこの)、荒行者(あれゆけば)、出立毎爾(いでたつごとに)、嘆思益(なげきしまさる)、