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冠辞考
一阿
あまざかる 〈ひな むかつひめ〉 神代紀に、阿磨佐箇屡(あまざかる)、避奈菟謎乃(ひなつめの)、〈◯中略〉こは都がたより、ひなの国おのぞめば、天とともに遠放(とほざかり)て見ゆるよしにて、天放るとは冠らせたり、さかるとは、こヽより避り離れて遠きおいふ、古事記に奥疎神(おきさかるかみ)〈訓疎雲奢加留〉万葉巻十三に夷離(ひなさかる)、国治爾登(くにおさめにと)、〈一雲、天疎夷治爾等、〉なほ集中に里放(さとさかり)、奥放(おいさけ)、振離(ふりさけ)、見放(みさけ)など有も、さかるは同じ語也、さて天ざかるのさは、音便にて濁るべき例也、よりて集中に安麻射加流(あまざかる)と書て、射は専ら濁る語に用ゆ、且夷(ひな)ざかるも同じ意なるに、それに謝(ざ)の字おしも書し也、ひなは田居中(たいなか)也、そのたいなかの上下お略き、且いとひお通はせてひなといへり、即いなかてふも、田お略きていふにて同じ意なるお思へ、