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今昔物語
三十
大和国人得人娘語第六 今昔の守のと雲ふ人有けり、〈◯中略〉少将家に止事無き学生の博士の来たりけるに、物語の次でに、少将畳の裏と雲ふ事は何と雲事ぞと問ければ、博士、畳の裏とは大和に有る城下と雲ふ所おこそ、古へ旧事に申たれと雲ければ、少将此お聞て心の内に喜び思て、然ては其に住む人なヽりと心得て、上の空なれども、彼の人に心移り畢にけり、