[p.0420]
三国地志
六伊勢
州名 按伊勢の名義、前にもある如く、皇孫降臨の時、已に伊勢狭長田五十鈴河上の語あり、神武東征のとき、神風伊勢の海の御謡あれば、伊勢の国号其始るところひさし、然るに風土記に伊勢彦よりはじまる名とするは誤なるべし、伊勢津彦、伊予津彦など、皆其国お領するより、人の名とするものにして、人の名よりして国の名となるにあらず、且伊勢の訓意詳ならず、婦女の詞に、衣服お縫ふとき、皺およせることおいせると雲ことあれば、垂仁紀に神風伊勢国則常世之浪重浪帰国也と雲お以、波いせるの略語にぞいせと雲か、然ども浪よせる国は、いせにもかぎるべからざれば、おぼつかなし、或はいせは妹背の中略と雲ひ、又歌に五十瀬渡ると読る如く、五十瀬にして、猿田彦命よりはじまり、則五十鈴の略語、土金自然の国号なりとも雲ひ、いづれか是なるおしらず、