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勢陽五鈴遺響
首中
風土総論 風土寒温(○○)お論ずるに、一志郡雲出川お限り、南北お分裁して稍異也、古昔北郡南部お分置の称実に合へり、桑名、員弁、朝明、三重、河曲、菴芸、鈴鹿の八郡は、風土相似て寒温相等し、寒は速に暑は稍遅し、然ども桑名、員弁、朝明、三重の四郡は、霜雪多して寒厳なり、最桑名海南の地は、冬月稍温なるに似り、其余の三郡は寒甚し、河曲、鈴鹿、菴芸、安濃は相等し、然ども菴芸、河曲、海南の地は稍温なり、暑も相従へり、南郡一志、飯高、多気、飯野、度会五郡は、風土相似て寒温稍同じ、然ども度会海東南の地は、至て温にして霜雪希なり、其余四郡は暑速に寒遅し、大略相似りとす、北郡山岳険巌に倚る処は寒甚く、海瀕低坦に居するは稍湿なり、西北に山岳お帯、東南に海江に拠るが故に温和なりとすべし、南郡は山岳坦平にして、東南江海に臨むが故に、至て温にて陰温多し、常に東南の風多して、陰雨屡下り水厄多し、北郡は常に西朔の題多して、霜雪頻に厚く、燥寒にして水厄希なり、