[p.0448]
三国地志
十二伊勢
桑名郡 郷名 長島〈◯中略〉 按、長島の地、東西二里有余、南北或一里、或半里にして、大河四方お環り、巽は東海勢尾の交会にして、桑名お隔こと才に八丁、船お以他境に便し、運漕自由お得たり、魚鳥蛤蜊猶多、城辺、池沼、平田、蒹葭連り、至て堅固也、其地尾張の西、伊勢の北也、〈押付村の橋お界ひ、西中川村、東殿名村に至るまで、北方尾州海西郡内と称す、〉故に中古、尾州西方と称す、信長記等亦然り、近世伊勢の地とのみ雲て、郡名おしらず、或は尾州海西郡と雲ひ、或は勢州横郡と雲、〈小寺氏説雲、蓋伊勢国者、南北二日路、或二日半路、東西一日路、或半日路也、乃桑名郡勢、北地傍横、其余郡皆跨竪也、疑卑俗以是謂横郡歟、〉寛文四年の夏、公裁に依て桑名郡に属す、今之お思ふに、よく古にかなふと雲つべし、風土記、本郡に河内野の地名ありて、真記に河内長島と記し、今其名の存するあれば、古より桑名郡なること必せり、