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古事記伝
二十七
尾張国、名義未思得ず、〈万葉十三に、小沼田之年魚道之水乎(おぬまだのあゆちのみづお)雲々、此沼字は、治の誤にて、袁波理陀(おはりだ)なるべし、さて続紀廿九に、尾張国山田郡人、小治田(おはりだの)連薬等八人、賜姓尾張宿禰とあると合せて思へば、尾張お小治田とも雲しか、若然らば、即小治にて、田に依る名なるべし、又神代に伊都之尾羽張(いつのおはばり)と雲剣名もあれば、草剃剣に因て、此も尾羽張の約まりたる名かとも思へど、此国名は、倭建命より前にあり、又彼剣もと大蛇の尾より出たるに就て雲る説もあれど、あたらず、又国形の南方へ長く尾の張たる故の名と雲もいかゞ、又此国の風土記と雲物に、終の意に雲ることあれど、其説さだかに聞えがたし、凡て此風土記はやゝ後の物なり、〉