[p.0539]
三河国は、みかはのくにと雲ふ、東海道に在り、東は遠江、西は尾張、北は美濃、及び信濃に界し、南は海に面せり、東西凡そ十六里半、南北凡そ十七里、其地勢は、北方には飛騨、信濃二国に蟠まれる木曾山脈の一部重畳し、東南には、甲斐、信濃、遠江に連なれる赤石山脈の余波、其国境お走り、国内概ね山岳に富む、此国は、古へ国府お宝飫郡に置き、碧海(あおみ)、賀茂(かも)、額田(ぬかた)、播豆(はづ)、宝飫(ほお)、設楽(しだら)、八名(やな)、渥美(あつみ)の八郡お管し、延喜の制、上国に列す、明治維新の後加茂郡お東西に設楽郡お南北に分ち、凡て十郡と為し、愛知県おして之お治せしむ、