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人国記

遠江国 遠江国の風俗、三河に不異而、人之気何事に付てもひるむ気なし、さるに仍て可死処と見る則は、たとへ節にあたらずしても死おする人多し、雖然三州に替りて物お頼にする気有、因滋に謟ふ気質あらはれて見ゆる儀、事々に付て如斯、されども昨日味方になり、今日敵に成如く之儀は、いかヾ頼む程の儀有とても有間敷国也、唯己々智お以、下より上おはかつて我お不知而、上下ともに主之善悪お、下として誹謗して、而も夫お諫る事なく、党お立て他お求ん事お好む族の風俗也、智恵あつて気尖成故善に近し、何事に付ても明白とのぶる事の不成風俗也、嫌ふ処も多し、一国之内にても、東よりて一入かくのごとくなり、