[p.0633][p.0634]
人国記
駿河国 駿河国之風俗、遠州に替り、人の気狭く、而も実寡し、然ども気狭きが故に、伸る心すくなく、気の屈する時は取なおす事ならず而、命お終るもの時々成故に、思ひ詰たる時は、気一和する故に、片くへなき所有、雖然常に諂ふ事なく而、毎物に気お付、思慮深くして、ぬきんずる者すくなく、人に従ふ心大分有て、義お思ひ詰て立る人は小分也、都而いけん多く而、吾は人お誹り、人は吾おいやしむ、風儀更にしまりなき国なり、去るに因て一国一和するといへども、一郡一庄一郷に気質之公成人希に而欲深し、是国お静めん事、旧悪お不数而、其悔る処之事お不糺其勢お高く振ふ時は、心気とろけて旗お巻くこと、日お不可期也、