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日本地誌提要
十六伊豆
沿革 古へ国府お田方郡に置、〈今の君沢郡三島駅是なり〉鎌府の初、山名義範守護お以て州守お兼ぬ、文治中、後白河法皇特旨あり、本州お頼朝に賜ひ、子孫に伝へしむ、足利基氏鎌倉管領たるに及び、其執事上杉憲顕お以て守護とす、正平中、憲顕帰順し、畠山義深之に代る、義深西帰、憲顕再足利氏に降り、本州復其所管となる、享徳の初、足利成氏(しげうぢ)両上杉氏と相攻め、関東大に乱る、長禄元年、山内房顕、扇谷定正、将軍義政の弟政知お北条郷堀越の館に奉じて主帥まし、関東に号令す、延徳中、政知卒し内乱作る、韮山城主北条長氏襲ひ擊て堀越お陥れ、政知の子茶々丸お殺し、遂に闔州お併す、天正十八年、豊臣氏東征、北条氏亡び、地徳川氏に帰し、内藤信成お韮山に封じ、戸田忠次に下田お賜ひ、其余郡邑州の豪族江川英長お代官として民政お知しむ、慶長中、内藤戸田二氏封お転じ、江川氏代官お世襲す、〈後大島八丈諸島お兼管す〉王政革新、改て韮山県お置、既にして廃して足柄県より兼治す、