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東関紀行
源親行
抑かまくらのはじめお申せば、故右大将家〈◯源頼朝〉と聞え給ふ、水の尾の御門〈◯清和〉の九の世のはつえお、たけき人にうけたり、さりにし治承のすえにあたりて、義兵おあげて、朝敵おなびかすより、恩賞しきりに、滝山の跡おつぎて、将軍のめしおえたり、営館おこの所にしめ、仏神おそのみぎりにあがめ奉るよりこのかた、今繁昌の地となれり、中にも鶴岡の若宮は、松柏のみどりいよ〳〵しげく、蘋蘩のそなへかくることなし、〈◯下略〉