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倭訓栞
前編三十一牟
むさし 武蔵およむは、音の転ぜる也、もと古事記には胸刺と見ゆ、又歌に佐泥佐斯佐賀牟とあるも、佐は発語、泥はむねの略、さむねさしにて、武蔵相模お並べ挙たる也、にひばりつくばお並べ挙たるが如し、又或は佐斯の間泥お脱し、さねさねしにて、相模の枕辞也ともいへり、軽の皇子の歌に、さねしさねてはとよめるが如し、