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新編武蔵風土記稿
一総国図説
武蔵国は、氐の分野に属す、江戸の地、北極出地三十五度半、或は三十六度、〈水土考〉国の大抵巽お首とし、乾お尾とす、南北袤、相模国志名野坂〈鎌倉郡に属す〉堺より、上野国新町宿〈緑野郡に属す〉界勅使河原〈賀美郡〉迄三十二里十九町、東西広、下総国松戸渡界金町村より、〈松戸は総州、金町は武州、共に葛飾郡、〉甲斐国雁坂峙〈山梨郡に在〉界迄四十一里一町、〈広袤里程正保検査に拠〉此武甲の界は、山林岑蔚の地にして、人跡の及ばざる所、凡七八里もあるべしと雲、此辺秩父郡は開国最初の地なり、三峯お鎮として連山併峙し、多西都筑数郡大小の諸山、波涛の如く朝宗す、東の方は利根川、及其支流海に疏通し、大城の前後、平坦の地広大なり、是故に魚塩の利、山野の産に富む、