[p.0928]
伊勢物語

むかしむさしなる男、京なる女のもとに、聞ゆればはづかし、聞えねばくるしとかきて、うはがきにむさしあぶみとかきておこせて、のち、おともせずなりにければ、京より女、 むさしあぶみさすがにかけて頼むにはとはぬもつらしとふもうるさし、とあるお見てなん、たへがたき心ちしける、 とへばいふとはねばうらむむさしあぶみかヽるおりにや人はしぬらん