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江戸紀聞

江戸大意武蔵国江戸は、豊島郡荏原郡二郡にかヽれり、上古はすべて武蔵野の内にて、広漠の野なり、此野は、その境もさだかならざれど、古き文書に雲、凡十郡に跨りて、西は秩父根、東は海お限り、南は向が岡都筑原(つヾきがはら)、北は入間郡河越に至れりと或書に見ゆ、江戸はその東の方にて、中古中武蔵ともいへり、〈〇中略〉当国の全図お以て考ふるに、豊島郡東は隅田川おかぎり、西は落合村柏木村の辺おさかひとし、南は麻布澀谷村にとヾまり、北は岩淵志村の辺に至れり、荏原郡は、東北三田村、白金村、世田谷村の辺にいたり西南は品川大森おかけ、多磨川おさかひとせり、此二郡にわたるものは、則江戸の地なり、