[p.0945]
慶長見聞集

江戸町の水道の事 見しは昔、江戸町の跡は今大名町になり、今の江戸町は、十二年以前までは、大海原なりしお、当君〈〇徳川家康〉の御威勢にて、南海おうめ陸地となし、町お立給ふ、然に町ゆたかにさかふるといへども、井の水へ塩さし入、万民是おなげくと聞召、民おあはれみ給ひ、神田明神山岸の水お北東の町へながし、山王山本の流お西南の町へながし、此二水お江戸町へあまねくあたへ給ふ、