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御府内備考
三十二本郷
本郷は古しへ湯島の内にして、その本郷なれば、湯島本郷と称すべきお、上略して本郷とのみ唱へしより、後世湯島と本郷とはおのづから別の地名と成りしなるべし、〈〇中略〉天正十九年、駒込吉祥寺へ御寄附の文書に、寄進武蔵豊島郡本郷之内五十石之事、如先規令寄附訖雲々とあり、及同年小石川祥雲寺に賜ひし御寄附状にも、本郷の内にて五石の地お賜ふ由載たれば、此二寺之領も、古へより、本郷の内にありし事知るべし、今本郷と称する地域の大様は、東之方湯島に続き、〈松平加賀守屋敷は、湯島と本郷にかヽりて、東の方に多く湯島の内なりと雲、〉西は小石川に境、南は神田川に限り、北は駒込に隣り、されど小石川の地にも少しく接はれり、〈武蔵屋敷の堺界定めならず、姑くその大略おいへり、〉