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続江戸砂子

江府名産〈并近在近国〉 塩瀬饅頭 日本ばし通一丁目 塩瀬山城〈〇中略〉 塩瀬和巾 茶の湯に用るふくさ也、右山城にあり、〈むらさきの色、仕立共によろし、此家の名物也、〉 鳥飼饅頭 本町一丁目 鳥飼和泉 猿屋饅頭 浅草こまかた堂 子持真猿屋 壺屋饅頭 元飯田町 壺屋六兵衛 園の梅 并 唐菓子 本町一丁目 鈴木越後 沙糖漬 〈本店京都〉 本石町二丁目通り丁 水本河内 丸屋求肥 神田鍛冶町一丁目 丸屋播磨〈〇中略〉 丸山軽焼 浅草誓願寺門前 茗荷屋九兵衛 京都丸山の製お摸す、餅かたくしまり、風味丸山にかはらず、 米屋白雪糕 神田としま町 米屋七兵衛 小児乳なきに用之に、その代りおなして育す、蓮肉お吉これお製すると雲、元禄の比までは湯島に住せり、御用地に成り、代地此所にわたりて則住す、柚餅 かぢばしの外 真猿屋 米饅頭 浅草金竜山の名物也、根元は慶安のころ、此所に鶴屋といふあり、その娘およねといへる製しそめたり、よつておよねがまんぢうといへるお、米饅頭と呼て、一名となれり、 幾世餅 両国ばし西の詰 小松屋喜兵衛 餅お一やきざつと焼て餡お点ず、風味美也、元禄十七のとしはじめてこれお製す、今諸所に摸して、江都の名物となれり、 助総麩の焼 〈かうじ町三丁目よこ丁〉 橘屋左兵衛 皮薄紙のごとくにして、餡お裹す、麩のやきはいやしきものとす、此助総が製は、うへ方にもめされ、あぢはひすぐれて美なり、〈〇中略〉 薄雪煎餅 やりや町 いせ屋次郎兵衛 花饅頭 回向院前 伊勢屋金三郎 名酒 品々あり〈南てんま丁一丁目てつほう町 鳥飼、大和岡本和泉〉 葡萄酒は腰腎お暖め、寒お避く、熱病瘡家歯の病に飲べからず、〈〇中略〉 隅田川諸白 浅草並木町 山屋半三郎 隅田川の水お以、元お造ると雲、〈〇中略〉 本江麹 本郷湯島より、江府の酒みそ麹多く出る、芝辺の麹は、増上寺切通しのうへ三田の辺より出る、総じて下町は湿地にて、三四尺下は水也、本郷又は三田辺は、土地高く室おしつらふに煩なし、よつて此職多く右の所に住す、 伊更子麩 芝伊更子当所の麩名物也、歯ぎれよく味ひ美也、 常盤麩〈さま〴〵の花かたあり、此ふ足にてふまず、手にてわく也、〉 芝神明前 越後屋五兵衛 粟麩 粟おまじへて製す、よつて黄也、 〈神田かぢ丁二丁のひがし影道〉 するがや長兵衛 揚どうふ 疎なし、名物也、〈他のあげどうふは多くうろあり〉 神田多町 山家屋吉左衛門 華蔵院豆腐〈かたちまんぢうのごとし、あぢわひつねにすぐれたり、〉 浅草花蔵院門前 七軒町 淡雪どうふ ゆしま切通し 山田や権兵衛 両国ばし日野屋藤次郎 祇園どうふ 湯島天神前茶屋 京祇園二軒茶屋の田楽お摸す、とうふおうすく切、少炙葛溜、蕃椒或は生姜お点ず、昔の製は、又異なりといへども、味ひ甘美也、 金竜山奈良茶 浅草金竜山の梺茶屋〈〇中略〉 目川菜飯 浅草雷神門広小路 東海道石部草津の間、目川村にて製する所の風味お摸す、 大仏餅 浅草並木町 根元は京誓願寺前に有、又方広寺大仏殿の門前伏見海道にあり、浅草にて製するはこれお効ふ也、〈〇中略〉 ひやうたん屋そば切 舟切の名物也 かうじ町四丁目へうたん屋佐右衛門〈〇中略〉 深川鮓 ふか川とみよし町柏屋 藤十郎茶 神田紺屋町二丁目 伊勢屋藤十郎 上下品のせんじ茶数品、年々駿遠の山方に至りて、元おたヾすのよし、〈〇中略〉 宇治挽茶 并 煎茶 本石町十軒店 八幡屋覚右衛門 池の端香煎 煮山椒 池のはた中町 酒袋加兵衛 油揚 ゆしま天神切通し 鳥もどき茸もどき品々 車屋心太 大豆粉沙糖お点ず、第一磯の匂なし、 車屋八左衛門(芝橋南詰) ところてん草は、石花菜の事也、こヽろふとヽ雲は、こヽろはこヾるも也、〈〇中略〉 編笠焼 又音羽焼とも雲 目白下音羽町九丁目 若狭屋 かたちあみ笠に似たり、黄色青色あり、当地やき餅の権輿といふ 扁〓木履(けほうあした) 新いづみ町 平四郎 浄林釜 鉄鋳蘆屋風、肌天明風 〈釜極所〉 大西国貞〈〇中略〉(八丁ぼり北島) 新身 播磨物 江府にて一軒の産 神田ぬし町 新身屋久左衛門 国広鍔 新つば一流 神田かぢ町 鍔志国広 藤四郎焼 茶碗水さしの類 浅草聖天丁 高原藤四郎 瀬戸助焼 茶碗水さしの類 すきやがし 瀬戸助 花林尺八一流の細工古今類なし 両国元町 花林清兵衛 翠簾屋針 京橋四方やしき 勘三釣針 御用御釣針師 両国東詰 吉川勘三 刃金燧〈所々にてひさぐ、しかれどもこれお根元と称す、〉 芝神明前 升屋三郎兵衛 神田箒 藁みごの箒也、むかし神田にて製しけるによつて此名あり、今其家とてもなし、所々にて製すといへども、此名お矩摸とす、 堺町雪踏 堺町よこ町長五郎屋敷門並に有、俗にせきだ町といふ也、切廻雪踏と雲あり、此所の名産也、〈〇中略〉 浅草紙 漉返し紙也、田原町三軒町の辺にて漉之、〈〇中略〉 今戸瓦 今戸、橋場、本所中之郷、瓦師多し、〈〇中略〉 浅草海苔 雷神門の辺にて製之、二三月の比さかんなり、 品川生海苔 品川大森の海辺にて取る、浅草にてせいする所ののりは、則此所ののり也、 葛西海苔 葛飾郡 桑川 舟堀 二の江 今井 これらの所にて取り、其所にて製す、名産也、浅草のりに似て又異也、〈〇中略〉 葛西菜 かさいは浅草川より東の総名也、前は下総の内なり、近年武蔵に属す、江府より二里三里ひがし也、此所の菘(な)いたつてやはらかに、天然と甘みあり、他国になき嘉品なり、〈〇中略〉 千住茄子 足立郡也、江戸より二里東に当る、 寺島茄子 西葛西の内也、中の郷の先、江戸より一里余、〈〇中略〉早稲田茗荷 牛込の内高田の近所 他所にすぐれて大く、美味也、江府のめうが多く比辺より出る、 地覆盆子(ぢいちご) 牛込の先き関口の辺より出る〈〇中略〉 佃の白魚 又麺条魚(しらうお) 又白小(同)と雲 初春海にあつて、二月の比川にくる、〈〇中略〉 浅草川の白魚 むかしは此海川になかりしお、寛永の末の比、しら魚の胤おまかせられしと也、 浅草川紫鯉 駒形堂花川戸の辺也、此鯉色金紫也、山州淀川の鯉より勝れたりとす、〈〇中略〉 江戸前鰺 中ぶくらと雲、随一の名産也、総じて鯛平目にかぎらず、江戸前にて漁お前の魚と称して、諸魚共に佳品也、 業平橋蜆 中之郷なり、平橋の堀にて取る、名産也、〈〇中略〉 鉄炮洲鯊(はぜ) てつほうづ、石川島、永代橋の辺上品也、〈〇中略〉 深川蛤 佃冲、弁天冲、秋の末より冬に至、貝こまかにして、すぐれて大きなるは希也〈〇中略〉 浅草川手長海老 両国橋の少上、又本所竪川横川にあり、 揚場川手長海老 牛込御門の外吐水より下手の御堀 八足の内二足すぐれて長し、〈〇中略〉 品川鰒(ふぐ) しほさひといふ、大さ四五寸計、又尺ぐらいも有、味ひ淡し、 深川鰻 大きなるは希なり、中小の内小多し、甚好味也、 池の端鰻 不忍の池にてとるにあらず、千住尾久の辺よりもて来たるよし、すぐれて大きく、佳味也、〈〇中略〉 千住鮒 かたちひらくして小さし、二三寸計、五寸お大とす、風味琵琶湖の鮒に、おとらず、〈〇中略〉 芝苗蝦(しばあみ) 大さ一寸にたらざる小海老也〈〇中略〉 芝海老 芝浦の名産也、車海老よりちいさく、全身やはらかにして甘美也、秋のすへより初冬に至りさかん也、〈〇中略〉 宮戸川鯰 関東には鯰なきよし、古来よりいひつたへたりしが、享保七八の比より浅草川に多し、上方の鯰とはかたち異なれども、大方は似たり、〈〇中略〉 深川蠣 深川冲にて取る、名産也、〈〇中略〉 金魚 所々にて売 元和年中異邦より渡る、飼魚にて、江河になし、藻の中に子おなす、〈〇下略〉