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東海道名所記

浅草(○○)には観音おはします、貴賤群聚してあゆみおはこぶ、〈〇中略〉浅草より丑寅のかた半里計ゆきて、角田川(○○○)あり、この川に都鳥あり、〈〇中略〉それより東叡山しの輪津が池(○○○○○○○○○)おめぐり見る、池の中には弁才天あり、東叡山の中には、東照権現の御社あり、〈〇中略〉春は並木の桜花、さきつづく枝々、吉野はつせの名所にもこえたり、山の上より見おろせば、しのわづか池は、目のした也、南海はれて安房上総も手にとる計に見え渡れり、江戸の城よりは艮にあたれば、都の比叡になぞらへ、東叡の名おあらはし、鬼門おまもる山とせり、〈〇中略〉これより、〈〇麻布〉巽のかた半里ばかりに、愛宕山(○○○)あり、これは勝軍地蔵と申て、武家殊更にあがめたてまつる、いつの比か、京のあたごお遠江国なるこ坂に勧請し、それそり駿河の国宇津のやにうつし、又この所にうつし奉りける、此山上にのぼれば、江戸中南海残らずみゆ、