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慶長見聞集

江戸町境論の事 江戸町わりは、十二年巳前の事なり、其頃売買に、金一両二両の屋敷は、今百両二百両五百両のあたへする、町さか行まヽ、皆人やしきお高くつきあげ、家おあたらしく作りなほす、昔の境ぐいお尋るに、ほそきくひお立置つれば、みなくさりて一々其印一つもなし、然間寸地分地の境おあらそひ、人毎に雲事して、近き隣も心遠くへだヽりぬ、