安房概志

一

郡名　平郡(へぐり)郡〈和名抄曰、倍久利、〉　北は上総の天羽と国界お分ち、東朝夷長狭の二郡と接壌し、南安房郡に至て限る、其西面は海お蒂て遥に相模国と相対せり、〈〇中略〉吾妻鑑には平北郡(○○○)に作る、土人平北郡と呼お聞て、そのまヽ記したるか、又は字形の相似お以て、比お北に誤るにや、或は周西周東庁南庁北などの例にして、其頃平群の北お、平北と呼び、其南お平南と称したる歟、是皆詳ならず、又中古国の北方にあるお以て、直に此郡お北郡(○○)と呼たることあり、宝珠院の旧記に、北郡佐久間村、また里見記に、北郡大津城などみえたり、和漢三才図会には、平郡に作る、邦人の説に、平群郡は畿内に同名あれば之お忌諱し、且は混同せんことお恐て、近年は群の一字お省て平郡とのみ書せりと、然れども民部式に、諸国部内郡里等名並用二字、必取嘉名とみゆれば、平群の二字お用るお以て正とすべし、