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長門本平家物語
十一
兵衛佐殿は、使者お上総介千葉介方へ遣して、各々急ぎ来らるべし、是程の大事お引出しつヽ、此上は頼朝お世にあらせんとも、世にあらせじとも、両人が心なり、広常おば父と頼、常胤おば母と思ふべしと宣ひける、〈〇中略〉上総介広常は、此次第お聞て、我遅く参りぬとおもひて、当国中、伊比南、庁北、庁南、望西(○○)、望東(○○)、畔蒜、ほり口、むさ、山辺の者ども、平家の方人として、強き輩おば、押寄々々是おうち取、随ふ者おば相具して、一万余騎にて、下総の国府に参会す、