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近江国輿地志略
六十六野洲郡
夫以、野洲郡の文字、日本紀には益須に作る、釈日本紀には、益須は今の野洲郡なりといふ、古事記曰、美知能宇斯王之弟、水穂真若王者、近淡海之安直祖、又曰、近淡海之安国造之祖意富多牟和気雲々、安の国は安の郡なり、郡お国といひしためし古に多し、郡の音おぐにともよむ、たとへば銭おぜに、蘭おらにと雲が如く、此郡の地勢乾と巽とは長して広し、艮と坤とは短して狭し、此郡界南と坤とは栗太郡なり、北西と乾とは湖にして、東と艮とは蒲生郡に交る、巽は甲賀郡との界に接れり、