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近江国輿地志略
五十四蒲生郡
当郡もと蒲生野とて、広き郊野なり、日本紀に、蒲生野縦猟の事お載す、万葉集には、王皇蒲生野遊猟のとき、額田の王の作れる歌お載たり、此蒲生野ある故に、郡にも名づけしなるべし、此郡南は甲賀郡なり、東は伊勢国界、千草山水晶岳お限、北は神崎郡の界に隣乾は伊崎山長命寺山に至り、西は野洲郡の界、桜山鏡山に接す、一郡の地勢東西長くして南北短し、乾と巽と広して、坤と艮との間窮迫なり、