[p.1230]
新撰美濃志
一美濃全体説
州号は、異国のさまおまねびて、よからぬならひなれど、むかしより詩文には用ふる人多く、本朝文粋、本朝麗藻、田氏文集、元亨釈書、砂石集、日本紀竟宴和歌の橘朝臣直幹が歌の前書等に美州とかきて、頭文字お用ひしは正しく、同じ田氏文集、本朝無題詩等に濃州とかきしより、いまに至るまで通用となりしは、かへりてたゞしからず、伊賀伊勢頭文字同じければ、伊州勢州と上下の文字お用ひわけしはむべなり、美作に作州と下の文字お用ひたれば、当国にはさしつかへなく頭字お用べき事也、