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諸国名義考

美濃 和名抄に、美濃、〈国府在不破郡〉名義は各務野(かヾむぬ)、青野(あおぬ)、賀茂野(かもぬ)などあれば、三野(みぬ)なるか、または野(の)お称(たヽ)へて真野(みぬ)なるか、上にいへる参河の例おも思ふべし、古事記伝に、名義真野(みぬ)なるよし論ひ給へり、彦麻呂ひそかに思ふに、身悩(みなやむ)の約りにてはあらざるか、奈夜牟(なやむ)の三言お約れば、奴(ぬ)の一言になれり、延喜神名式に、美濃国不破郡仲山金山彦(びこの)神社〈名神大〉とあり、この神は古事記の伊邪那美命の火之夜芸速男(ひのやぎはやおの)神お生給ふ段に、因生此子、美蕃登見炙而病臥在、多具理邇生神(なりませる)名金山毘古神雲々とある、金山は仮字にて、令疲悩(すつがれなやま)の略かりなるよし、古事記伝にあり、又は身濡の略(はぶ)かりにてもあらむか、同記日代宮の段に、倭建命取伊服岐山之神幸行雲々、騰其山之時、白猪逢于山辺、其大如牛雲々、其神之使者、雖今不殺、還時将殺而騰坐、於是零大氷雨、打惑倭建命雲々とあればなり、伊勢国にての詔に、吾足如三重匂、而甚疲、故号其地謂三重とある類なるべし、