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更科日記
美濃の国なるさかひに、すのまたといふわたりして、野がみといふ所につきぬ、そこにあそびともいで来て、夜ひとよ、歌うたふに、あしがら成し思ひ出られて、哀に恋しき事かぎりなし、雪降あれまどふに、ものゝ興もなくて、不破の関、あつみの山などこえて、近江の国、おきながといふ人の家にやどりて、四五日あり、