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美濃明細記
十名所和歌
関藤川〈不破郡、関け原の西、不破関跡の西に、近江国坂田郡藤川駅の方より不破関のきはに流る、むかしより橋にて渡る、〇中略〉 不破関〈不破郡、関け原の西、松尾村大関に旧跡あり、〇中略〉 野上里〈不破郡関け原の東にあり〇中略〉 美濃御山〈不破郡、宮代南宮山也、みのゝ中山のうちなる故、南宮お仲山金山彦太神と称奉る也、山の上にむかしひとつ松有、一条兼良公植継せ給ふ松もかれて、峯にあとお残せり、〇中略〉 南宮神木白玉椿〈みのゝお山よみ合也〇中略〉 美濃中山〈不破郡、南宮山より西、関け原迄の山続き、都てみのゝ中山と雲、西北の山と続かす、中にある山也、不破山と、万葉に人麻呂読るも此山なり、〇中略〉 美濃中道〈中山の西南に道あり、関け原牧田沢田のかた烏江より伊勢尾張へ船路の古道也、宗祇名所方角抄に出せり、〇中略〉 垂井水〈不破郡、垂井宿南宮鳥居の辺、名井有、古書足井とも書けり、〇中略〉 青墓里〈不破郡にあり〇中略〉 笠縫里〈安八郡にあり、昔此所往来の道にて、近き所に宿地と雲所有、十六夜記曰、関よりかきくらしつる雨、しぐれに過てふりくらせば、道もいとあしくて、心より外にかさいひのむまやと雲所にとゞまる、〈永仁六年二月十八日の事也〉〇中略〉 結神〈安八郡西結村に鎮座なり〇中略〉 稲葉山〈厚見郡岐阜山なり、因幡山とも書けり、〉 古今集在原行平の歌に、立わかれいな葉の山の峯に生る松としきかば今帰りこん、此歌八雲御抄、範兼抄、名所和歌集に美濃と有、清輔抄因州と有、文徳天皇実録雲、斉衡二年正月、従四位下在原朝臣行平為因幡守雲々、頓阿の井蛙抄雲、因幡国司任の時にや詠じけん、おぼつかなし、二条家伝雲、因州雲々、季吟拾穂抄に曰、両説なれども因州然るべし、此歌お本歌にして、後代美濃国稲葉山お読る例多し雲々、〈〇中略〉 伊津貫川〈席田郡西にあり〇中略〉 席田〈郡名なり、むかし此辺定家卿の知行所のよし、〇中略〉 船木山〈席田郡東境の上なり〇中略〉 宇留間〈各務郡鵜沼ともいふ、売間市ともあり、〉 岩田小町〈各務郡岩田村なり、今は野なく薄有、芥見村の近所より山城国岩田小野はすみれきゞす読り、みのは小薄真葛原読り、〇中略〉 日高杣〈其地不詳〇中略〉 月吉里〈土岐郡細久手の南也、此里より三日月影の白石出る、〇中略〉 土岐郡〈東美濃にあり〇中略〉 尾総橋〈方県郡雄総村の南、長良川にむかしは橋有、〇中略〉 母山〈武儀郡大矢田村の山也 神道百首卜部兼邦の歌に、美濃国喪山とあり、後に母山と書けるか、〇中略〉 寝覚里〈池田郡片山村八幡村お寝覚郷又寝覚庄と雲、片山鶯は春早く囀る也、寝覚の里の古歌、梅鶯搗衣とよめりと雲々、小島のすさみに寝覚里此あたりと雲也、〇中略〉 往来松〈厚見郡加納の西に有〉 松平丹後守光永加納の城にありし時、ゆきヽと名づけられ、同丹波守光熙宝永頃山城国淀城に移られし時、陪臣の人の歌に、 あけくれにながめしまつおふるさとの人の往来の便りにぞきく〈〇中略〉 南宮〈不破郡宮代に鎮座也、美濃国は東山道なれば、〇中略〉 伊吹明神〈不破郡伊吹村に鎮座也、野上より北へ入程近し、〇中略〉 今須〈不破郡にあり〇中略〉 山中〈不破郡山中村〇中略〉 鶯滝〈不破郡山中村往来道の南かたわらにちいさき滝なり、黒地川に隣れり、〇中略〉 黒地橋〈不破郡山中村黒地川有、川はゞせまけれど深き川也、〇中略〉 青野け原〈不破郡にあり、名所方角抄、秋寝覚に名所に入たり、〇中略〉 赤坂〈不破池田二郡にかゝる、秋寝覚にも名所に入、つゝじ紅葉月玉篠よめるとあり、〇中略〉 杭瀬川〈不破郡安八郡の境なり、赤坂の東に流るゝ川なり、昔はくいせ川、赤坂村辺より赤坂の東の川へ流るゝといへり、〇中略〉 美江寺観音〈本巣郡美江寺宿也、後に永禄比より岐阜に安置、〇中略〉 江口〈方県郡江口なり、長良川の流なり、〇中略〉 長良川鵜飼〈方県郡〇中略〉 富士見柳〈安八郡林中村に、享保始頃まで大木あり、〇中略〉 管瀬川〈大野郡長瀬村辺にあり〇中略〉 花なし山〈恵那郡東村の山也、大井宿の近所なり、〇中略〉 関け原〈不破郡にあり、秋寝覚に名所に入たり〇中略〉 三津屋〈安八郡に有、俗にみつや北方と雲によりて也、〇中略〉 小野長橋〈安八郡小野村の西に旧跡あり〇中略〉 藍川〈不破郡垂井駅の東に有〇中略〉 中川〈安八郡中川庄十三け村あり〇中略〉 結の里〈安八郡にあり〇中略〉 帷子山〈可児郡〇中略〉 竈山〈土岐郡今戸村にあり〇中略〉 遠山〈恵那郡岩村の辺お遠山の庄と雲〇中略〉 白雲水〈郡上郡山田庄宮瀬川の辺に泉あり、俗に宗祇水と雲、紅葉ばの流るゝ竜田白雲の花のみよし野おもひ忘るな、といへる東野州の歌によりて白雲水と名付く、〉東野州常縁宗祇に古今伝授して、此所まで送り来り、和歌お詠じてあたへられし跡ゆへ宗祇水といへり、今金森兵部少輔台近の領地たれば、永く世に伝んことお公卿にねがひて、其ことの葉お多くあつめて世に伝へり、 言の葉の道に結びし契おもつきぬ泉に残す跡かな 光栄(烏丸従三位)