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飛騨国はひだのくにと雲ふ、東山道に在り、東は信濃、西は加賀、越前、南は美濃、北は越中に界し、東西凡そ十七里、南北凡そ二十里、其地勢は四方皆山岳お以て囲摎し、国内亦山巒重畳して殆ど平地なし、此国は古へ国府お大野郡に置き、大野(おほの)、益田(ましだ)、荒城(あらき)の三郡お管し、延喜の制、下国に列す、後世の書に、大野郡お天野、或は大原に作り、又大原、益田、天野、荒城の四郡お挙げたるもあれど、皆誤なり、蓋し徳川幕府の比、荒城郡お吉城郡と書しるるもの多く公私の文書に見えたり、是文字の城お荒すと雲ふに通ずるお悪み、好字お以て替へたるなりと雲へり、明治維新の後、岐阜県おして之お治せしむ、