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飛州志
七人事
【度市参】(としま) 本土もとより山国なれば塩無し、仍て自他州の民、越中美濃の両国より塩お牛に負せ、此州の市四に来りて買(あきの)ふ者の総名お度市参(としま)と雲へり、其市四に於て塩お預り売出すものおば、度市参屋(としまや)と雲い、度市参宿と雲ふ也、是他州の塩問屋と雲ふに同じ、 按ずるに、一月六次三度の市お為すは、古代の政治也、其度毎には遠近と無く民参り向いて商ふに、古昔は塩のみにも限るべからず、外の売物も交(まじ)えたらん、されども山国にて其重んずるものお先づ雲ふとて、塩の事のみに成り来れるか、六度三度の市に参ると雲ふの略語なるべし、〈〇中略〉 【俗道場】(ぞくどうじやう) 本土は東西本願寺宗の寺坊多し、寺号或は坊号お称する中に、其主俗体俗名(そのぬしぞくていぞくめう)にして法用お務め、村里に檀家の民あつて、代々相続するお俗道場(ぞくどうじやう)と雲ふ也、或は毛坊主(○○○)とも雲へり、道場は宗旨の通称たり、