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信府統記

伊奈郡〈高十二万二千六百八十七石九斗四升六合九勺四才、村数三百三十六、〉 此郡は東前岳の北麓甲州かまなし川の涯諏訪郡界より、南前岳の峯通お境として甲斐国へ隣る、〈此山甲斐国にては駒け岳と雲ふ〉但しかまなし川より此峯までの間は、山中境分明ならず、此峯より甲斐駿河信濃三国界の山までの間、亦境界判明せず、但し前岳より三国境は巳午の方に当る、又是より巳の方へ遥に出張たる山岳は、即ち駿河遠江信濃三国の境なりとす、其間は左右とも境界知れず、当郡和田川より東山深く村里も無れば路もなし、況て隣国へ通路あることなし、是より遥に西青萌峠と雲て遠江国へ通すべき路あり、木沢村より南へ一里余、和田川の西お通りて、川お東へ歩渡りにて越え和田村に至る、和田村より遠江国領家村まで四里二十四町、此青萌峠、峯通国境〈遠江国にても同名〉是より未申の方に河内川、東より西へ流れて天竜川へ落る、此河内川国堺なり、〈遠江国にては境の沢と称す〉和田川お歩渡りにて越え、天竜川の東に鶯巣村と雲あり、是より遠江国塩沢まで山路二里十八町なり、〈河内川お越え行く〉