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信府統記

信州松本城記録 信濃国筑摩郡〈〇中略〉 当郡は中古小笠原氏の領地たりし故、彼幕下の氏族たる人、所々分ち領して、或は古城の跡え倚り、又は新に城お築き、屋鋪お構て住居す、其中に島立右近〈本氏広野〉と雲ふ人、始は庄内の地、小島村井河の城に住し、後城お今の松本の地に移せり、〈此井河の城は、四方に流ありて、井の字の如くなる故に、井河の城と雲ふ、古へ誰人の築けると雲ふことお知らず、久しく小笠原家にて持来れる処、城主中絶して城郭廃壊せり、寛正六年乙酉、再び之お修覆して、攺め名つけて深志城と雲ふ、此辺は小笠原氏数代の領地なるが故に、文亀年中迄、林の城主より兼ね持てり、島立右近も小笠原の一族たりしとなり、〉