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古事記伝
二十三
上毛野(かみつけぬ)は、和名抄に上野〈加三豆介乃〉国とある是なり、〈毛字お省きて上野と書くは二字につゞめ書例ぞ、斉明紀には、上毛野国とあり、又後世野お略きて、かみつけとのみ雲は訛なり、又其おかうづけと雲は、美お音便にうと雲、又音便のうんの下は多く濁る例にて、つおも濁りて呼なり、〉万葉十四、上野国歌に、可美都気努(かみつけぬ)、又可美都気野(かみつけぬ)などよめり、〈又一可美都気乃ともある、乃字は、奴の誤なるべし、和名抄などのころにこそ、野おば、もはら乃と雲つれ、古には然ることなく、又野お省きて、加美都気と雲ることも無ければ、辞の乃にも非ればなり、凡そ此国名およめる歌、十二首ある中に、乃と雲るは隻一にて、余はみな奴なるおや、〉名義未思得ず、毛は草木お雲か、木お気と雲ることもあり、〈顕昭古今注に、坂東は足柄の関より東いと山なども侍らず、みなはるかなる野な〉〈りと雲り、〉