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人国記
上野国 上野国の風俗は、碓氷、吾妻、利根三郡は、人之形儀信州に似たり、亦勢田、佐位、新田、片岡四郡は、風儀信州より上分の風俗也、然ども詰る所之意地少信濃よりは不足也、其譬お雲に、人之気上分成故に免す所の気有て、我と我が非お少き也と、小罪お免してなすが如し、小罪おなす時は後大罪に及ぶ事眼前也、然れば信濃の風俗上下ともに弓箭お取れば、負て気の屈する事なく、亦出て先悔おすヽがんとはげむが如く、此国は二三度も如斯なれども、後には理非お談じて不入剛気なれば、人数お損ぜんよりは、戦お可止などヽ、半より能分別発て、差置く等の風儀に而、しまりすくなく而、亦邑楽、群馬、甘羅、多胡、緑野、那波、山田等之郡の風俗は、一気勢に而一人気おはげませば、諸人気お一に而一同しぬ、一人気お縮め気おくぢかれて退く気は、諸人其気に同するの類の風儀也、雖然根性は徹したる心あれども、気質の変につながるヽ事余にこへたり、