[p.0069]
十訓抄

源経兼下野守にて在国の時、或もの便書お以て、雑事など乞に、大かた便りなき由などいひて、はか〴〵しき事もせねば、冷然として、二三町ばかりゆくお、人お走らかして、さらばとよびかへしければ、不便なりとて、しかるべき物などたぶべきかと思て帰たるに、経兼雲、あれ見給へ、室の八島(○○○○)はこれなり、都に人にかたり給へと雲、いよ〳〵腹立気有て帰にけり、〈◯下略〉