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太平記
十九
奥州国司顕家卿上洛并新田徳寿丸上洛の事 奥州の国司北畠源中納言顕家卿、去元弘三年正月に、園城寺合戦の時上洛せられて、義貞に力お加へ、尊氏卿お西海に漂はせし、無双の大功也とて、鎮守府の将軍に成して、又奥州へぞ下されける、〈◯中略〉顕家卿時お得たりと悦て、廻文お以て便宜の輩お催さるヽに、結城上野入道道忠お始として、伊達、信夫、南部、下山六千余騎にて馳加る、国司則其勢お并て、三万余騎、白川の関へ打越給に、奥州五十四郡(○○○○○○)の勢共多分はせ付て、程なく十万余騎に成にけり、