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出羽国風土略記
九仙北郡
村数百七十二け村、当郡に馬蛭岳とて高山有、土人鬼住山といふ、 按に、仙北の二字、雄勝平鹿山本三郡の総号にして、往古一郡の名に非る事、第一巻并前件にも記し、土人に聞に、寛文四年辰山本郡お仙北と改といへども、東鑑文治元年条に、出羽国山本郡と有ば、郡名に用たる事も近代の事とは不見、但近年米沢上杉家より写し出たる国絵図お見るに、当郡お山本郡と記し、〈土人寛文年中、山本郡お仙北と改といふも、此説によれば拠有に似たり、仙北郡といふ事、上杉家の国絵図には見へず、〉今の山本郡おば檜山郡と記す、檜山は郷名にして郡名にはあらず、是のみならず郷名お郡名にしたる所二三け所有、