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奥の細路
南部道はるかに見やりて、岩手の里に泊る、小黒崎美豆の小島お過ぎて、鳴子の湯より尿前の関にかヽりて、出羽の国に越えんとす、〈◯中略〉あるじのいふ、是より出羽の国に、大山おへだてヽ路さだかならざれば、道しるべの人おたのみて越ゆべきよしお申す、〈◯中略〉あるじの言ふにたがはず、高山森々として一鳥の声お聞かず、木の下茂りあひて、夜行くが如し、雲端に土降るここちして、篠の中蹈みわけ、水お渉り石に蹶き、肌につめたき汗お流して最上の荘(○○○○)に出づ、