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人国記
越前国 越前之国の風俗、日本に無双智恵国と覚たり、是上臈より下臈に至まで、他の国に分つ而見る時、如此之弁舌、尾州にも劣るまじき国なり、さるに仍て、高慢にして底意地悪敷、軽薄に有之、一旦頼母敷やうにて語る処つれなく、譬ば人お過め走り入て頼む時は、心安く請合て、詮議頻り成時はつれなく突放し、或は旅人之渡りに舟お求れば、あたいの甲乙にて舟お不渡、亦は執行暮て宿お求るにも、余国に違て万事つれなく、如此成作法百人に四五十如此なり、智有て智お発つ而、諸事に闇き事なく弁ずるお本智とす、是国の人は智有て邪智おヽくして義すくなし、