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今昔物語
三十一
能登国鬼寝屋島語第廿一 今昔、能登国の奥に寝屋と雲ふ島有也、其の島には河原の石の有る様に鮑の多く有なれば、其の国に光島と雲ふ浦有り、其の浦に住む海人共もは、其の鬼の寝屋に渡てぞ鮑お取て、国の司には弁ける、其の光の浦より鬼の寝屋は、一日一夜走て人行なる、亦其より彼の方に猫の島と雲ふ島有なり、鬼の寝屋より其の猫の島へは、亦負風一日一夜走てぞ渡るなる、