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人国記
能登国 能登国の風俗は、別而人之心持狭くして、臂ば一足他へ踏出す時は、則渇命に及と思ふの類多し、因茲我主つれなくあてがふにも、誰々も渇命つなぐべきために奉公お勤る風儀に而、引放たる意地すくなし、雖然武士一身常之覚悟は如形なり、されば是国より他へ踏出る程之器量の族有て他出する時は、必可秀なり、不出時は国之棟梁と可成人也、若又他邦せず、棟梁とも不成蟄居するに於ては、自然と悪意お企る如くの風俗あるべし、偏固にして道理闇く、而も驕之気有之、